STORY

2006年、物余りの時代に疑問を感じながら、僕なりのデザインの必然性を模索していた。古着や骨董の文化に幼少期から興味があった事もあり、古着と生地屋に余り眠っていた残布を無駄にしない活用方法、“リキッドニット” に辿り着いた。そうやって物作りを続けていたら、コムデギャルソンさんや伊勢丹さんからもオファーが来る様になった。その古い物と新しい感覚が渾然一体となったリキッドニットは、最先端のトレンドでも無く、斬新で奇抜なモードでも無い、過去と未来が同居してるような不思議な作品に見えたのかもしれない。良くも悪くも、“ファッションは時代を映す鏡” である。情報革命やデジタル化も手伝い、やがて、そのトレンドを映し出す魔法のブラックボックスにまで光が当てられる様になった。そして、トレンドは“数字と記号化”に置き換えられ始めた。消費サイクルの早い、数字の取り合いゲームの様なファッション業界への憧れや熱量が無くなっていった。しかし、近年、消費サイクルが見直され、トレンドの記号化も一旦完結した様にも思える。このような流れの中、僕の新たなポジションも見えてきた。これからの未来には、作り過ぎて余った物を循環させる透明性の高い物作りやその仕組みが必要だと思う。エコを押し付けるのではなく、まずはモノ自体が楽しかったり美しかったり便利だったり、その後にエコロジーがついて来るような仕組みである。ECONET PROJECTに参画しクリエイティブディレクターとして従事するいま、ファッションに限らず、アートやプロダクトデザインなど、ユニバーサルで循環型のサイクルを構築する。それが僕の対峙すべき次の仕事だと思っている。 TYLER.

TYLER.

◎2006年 文化服装学院卒業後、アップサイクルアパレル desertic を設立。 ◎2007年 コムデギャルソンでの取扱いを機に伊勢丹新宿、日本橋三越など、全国のセレクトショップへ展開。 ◎2007年 世界中のビンテージニットを収集、“LiquidKnit” と名付けたリメイクアイテムを開発。 ◎2008年 糸井重里事務所(現 ほぼ日)のデザイナーに就任。 ◎2009年 ビンテージニットのパッチワークと EAMES チェアを組み合せた、“knitchair”を開発。コムデギャルソン ニューヨーク、香港、パリ、東京と、世界中の店舗で展開。 ◎2012年 エーロサーリネンの世界初の一本脚のスツール “knitstool” としてリリース。 ◎2012年 裏表参道に desertic アトリエショップをオープン。/ アート・テイラー・ユニット HARRY & TYLER 結成。 ◎2014年 DOVER STREET MARKET GINZA(川久保玲氏のショップ)にてコラボレーションアイテムを展開。 ◎2014年 インテリアファブリックメーカー『Knoll Textile』とアパレル初のコラボレーションアイテムを展開。 ◎2015年 オーガニック美容とファッションのライフスタイル提案サロン HEIGHTS をプロデュース。同店のインテリア、店舗什器デザインをてがける。 ◎2016年 高解像度映像機器メーカー『ASTRO』のユニフォームデザインをてがける。 ◎2017年 京都祇園『ない藤』のビーチサンダル『JOJO』とのコラボレーションを全国の百貨店にて展開。 ◎2019年 diskunion公式レコードバッグデザインをてがける。 ◎2020年 音楽家 大沢伸一とアップサイクルアパレル OFFICIAL GHOST をスタート。 ◎2021年 ECONET PROJECTクリエイティブ ディレクターに就任。